ステップアップチェス2022参加記②

 

2022年5月15日(日)に大田区産業プラザPIOで行われたステップアップチェス大会に参加してきました。

 

前編はこちら

 

2.0/3.0ptで最終ラウンドを迎えます。さすがに優勝の目はありませんが、もう1pt取ればタイブレーク次第で3位入賞はあるかもしれません。

しかし3Rでのひどい負けのダメージが癒えないまま4Rのボードに向かうことに。相手の方は貫禄があって強そうだし、なんだか日が落ちてきて切なくなってきたし、そもそも一日に4試合指すのも初めてで疲れてきたし……と、あの手この手で弱気な心が顔を出します。大丈夫か。

 

4R 黒番

早指しの大会なので基本的に棋譜を書く必要はなかったのですが、お相手の方が棋譜を書いていたので私も書きました。というわけで比較的まともな記録が残っています。

 

1.e4 e6 2.Nc3 d5 3.d4 Nf6 4.Bg5 Be7 5.Nf3 dxe4??

 

手順前後でフレンチクラシカルに。ここは5...Nxe4とすべきところで、以下6.Bxe7 Qxe7 7.Nxe4 dxe4 8.Nd2 f5として黒満足です。

余談ですが5...dxe4??の直後に相手が3分ぐらいの長考……と思ったら私が時計を押し忘れていました。15分+10秒というタイムコントロールのゲームで3分をサクリファイスしたダメージは大きく、この後も奇妙な手を連発します。

 

 

6. Bxf6 Bxf6 7. Nxe4 O-O 8. Nxf6+ Qxf6 9. Qd3 Bd7 10. O-O-O Rd8 11. h4 Bc6 12. Ng5 g6?

 

 

13.Qxh7+からの攻めが厳しいと思い込んでしかたなくg6を突きましたが、ここは単に12...h6としておけば13.Qh7+ Kf8以降白の継続がありません。

 

読みの甘さもありますが、OTBだと相手の攻めを過大評価して弱気な手を指してしまうことが多い気がします。

 

 

13. f3 Nd7 14. Ne4 Bxe4 15. Qxe4 Rab8 16. Bd3 Nb6 17. h5 Rxd4 18. Qe3 Nd5 19. Qh6 Qf4+ 20. Qxf4 Nxf4 21. g4 f5 22. hxg6 Nxg6??

 

お互い怪しい手を連発する中、黒1ポーンアップでエンドゲームに入りそうです。しかしここで22...Nxg6??がブランダーでした。単に22...hxg6としておけばよかったのですが、「22...hxg6には23.Rxh8+からのスキュアがある」などというとんでもない勘違いをしており、仕方なく22...Nxg6とした次第です。なんなんでしょうこういうの。

 

 

23. gxf5 exf5 24. Bxf5 Rbd8 25. Rxd4 Rxd4 26. b3 b6 27. Kb2 Rh4 28. Rd1 Ne5 29. Be4 Kf7 30. Rd5 Kf6 31. c4 Rf4 32. Ka3 Nxf3 33. Bxf3 (33. Bxh7 Ne5 34. Rd2) 33... Rxf3 34. Rd7

 

ピースの交換が進み、なんやかんやで1ポーンアップのルークエンディングに入ります。a7やc7のポーンが今にも落ちそうですが、hファイルのパスポーンを進めていけば勝てる……はず……?(エンジンによればこの局面は互角らしいです)

 

エンドゲームの勉強を疎かにしていたことを強く後悔しながらもなんとか勝ちを目指します。

 

34...h5 35. Rxc7 h4 36. Rxa7 Kg5 37. Rg7+ Kh5 38. Kb4 h3 39. Kb5 Rf2?? 40. Kxb6?? h2 41. a4 Kh6 42. Rg8 Kh7 43. Rc8 h1=Q 

 

お互いにおっかなびっくりのエンドゲーム。なんとか黒がプロモーションします。この何手か後に...Qe2+という手が入り、メイトが止まらず白がリザインしました。勝ち。

最後は持ち時間が1分ほどしかなかったので勝ちの瞬間の棋譜が書けていません。致し方なし。

 

結果発表

3.0/4.0ptという結果でした。2.0/4.0ptを目標にしていたのでとりあえずは満足です。ゲームの内容は反省点ばかりでしたが……。

 

さて、会場の外で順位の発表を待つことになります。1番ボードのゲームが終わるまでそこそこ時間があったので出場者の方々とお話できました。チェス歴のこと、普段通っているチェスクラブのこと、他愛もない内容ですがオフラインの場で同好の士と話せるというのは楽しいものですね。

 

私同様3.0ptの方もちらほら。入賞争いに絡んできそうですが全員タイブレークの仕組みをよく分かっていません。「タイブレークってどうなるんですかね」「強いやつに勝ったやつが有利になるらしいですよ」「そうなんですか」「いや違ったかもしれないです」などとフワフワした認識でした。

 

1番ボードのゲームが終わって表彰式へ。そわそわ。

 

 

 

2位でした。

 

 

えっ2位ってちょっと待ってくださいよ、3位なら分かるけど2位?なんで?写真撮影とかあるんだろうな、アホ毛跳ねてたらどうしよう、うわあ表彰式すぐ始まりそうだから直しにいく時間ないや、スピーチは?スピーチはあるのか?

 

写真撮影はありました。スピーチは優勝者だけでした。

 

 

所感

初めての大会参加で2位入賞、なかなかの結果だったのではないでしょうか。順位はタイブレークに恵まれた部分が大きいのでアレですが、3勝できたことは素直に嬉しいですね。と同時に自分の課題も痛感した一日でした。

 


様々な方と対局できたこと、参加者の方々と交流できたことなど結果以外の収穫も大きかった気がします。参加してよかったと思える大会でした。

 

そして運営スタッフの方々、本当にありがとうございました。プレーヤーのために奔走してくださる姿には感謝の気持ちでいっぱいになります。自分もOTBに慣れてきたら運営に参加してみたいな、などと思ってしまいました。

 


というわけで参加記でした。ステップアップチェス、大会デビューしてみたい人にはこれ以上ないイベントだと思います。今後も開催されるのかな?参加しようか迷っている人の一助となれば幸いです。それでは。

ステップアップチェス2022参加記①

2022年5月15日(日)に大田区産業プラザPIOで行われたステップアップチェス大会に参加してきました。

 

大会概要はこちら

初心者大会を謳っていますがれっきとした公式戦です。

 

 

 

0R 受付まで

14:00開場でしたがどうにも落ち着かず12:30頃に京急蒲田駅に着いてしまいます。ゆっくり昼食を摂ろうか、しかし満腹で眠くなってしまうのもどうなんだ、とはいえ脳の栄養補給をしておいたほうがいいのか……?などと逡巡した末、ファミマのイートインでサンドイッチとレッドブルというどっちつかずな選択。レッドブルに関しては篠田先生リスペクトかもしれません。

 

13:15頃に大会会場のフロアを覗きにいったものの開場しているはずはなく。近くのタリーズに入り、Lichessのタクティクスを解いて時間を潰します。

 

14:00、満を持して開場。受付を済ませます。フロアにはちびっ子とその保護者たちがいっぱい。成人男性が参加するのは場違いだったか?などと一瞬思ってしまいましたが、始まる前からそんな弱気でどうするのか。むしろ大人の厳しさを教えてやらねば。

 

会場はよくある会議室のようなところ。どこにでもある椅子と長机が並んでいますが、そこに盤と駒(と、対局時計と棋譜用紙)が置かれているだけで特別な光景に見えてくるのだから不思議なものです。

 

初戦のボードに向かうとそこには対戦相手の少年。「こんにちは〜〜」と無難な初手をぶつけます。不審がられてはいけない。その直後、焦って長机に膝をぶつけてしまいました。盤上の駒が揺れます。「あっ!ごめんね!ごめんね!」と動揺する成人男性。完全にナメられているでしょう。大人の厳しさを教えてやるとはなんだったのか。

 

参加者が揃うまでにまだ少し時間があり、向かいの少年と会話して間を持たせるべきかと悩みます。長考の末、おぼつかない英語で疑問手を連発しました。

 

How should I call your name?

-What?

〇〇(棋譜用紙に書いてあるファーストネームらしきもの)

-〇〇.

〇〇!Yeah!

 

Where do you play chess usually?

-Home.

Home!With your family?

-Yes.

 

素っ気ない返事に凹みます。彼は緊張していたか怯えていたかその両方でしょう。しかし悪手を後悔していても仕方ありません。「勝つのは最後から2番目にミスをしたプレイヤー」みたいな言葉もありますよね。

 

アービターの方から開始前の説明。テクニカルミーティングと言うんですね。15分+10秒という短いタイムコントロールなので棋譜を書く必要はないとのこと。後ろのほうから小学生男子の声で「やったー!」と聞こえてきて微笑ましい。

 

1R 白番

先述の通り棋譜が残っていないので詳細は覚えていませんが、記憶の限りで書き残しておきます。

 

イタリアン。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 d6?!という見慣れない手順でした。黒の黒マスビショップがパッシブになるのでメインラインよりも白が指しやすいかと思いましたが、そこを上手く利用できず。

 

黒の緩手もあり、下図のような局面になりました(たぶん)。f5のナイトが強力です。
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この後なんやかんやあってNxf7の手がd8Qとh8Kのロイヤルフォークになります。最後はB+N+Nでメイトが決まりました。勝ち

 

2R 黒番

このラウンドも小学生らしきプレイヤーとの対戦です。

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Bd3 Bd6 5.Nf3 Nf6 6.O-O 7.Bg5 Bg4 8.c3 c6 9.Nbd2 Nbd7 10.h3 Bh5 11.Re1 Qc7 12.Nf1 Rfe8 13.Ng3?!


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フレンチエクスチェンジ。手順前後があるかもしれませんがこんな感じで進行したはず。黒は鏡のように指していきます。

白はNb1-Nd2-Nf1-Ng3とマヌーバーするプランでしたが、

 

13…Bxg3 14.fxg3 Qxg3 15.Rxe8 Rxe8


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黒1ポーンアップ。白はキングの安全性が不安でしょうか。

 

この後なんやかんやあってビショップがタダ取り。さらになんやかんやあってクイーンがタダ取りになったところで白がリザインし、このラウンドも勝ち。これは優勝してしまうかも分からんぞ?などと思い始めます。

 

3R 白番

ラウンド間に少しお話しした方と対戦。たぶん同世代じゃなかろうか。

 

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 h6?! 4.d4! d6 5.O-O Nf6?! 6.Re1??
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イタリアン。3…h6とするAnti-Fried Liver DefenseはLichess1500付近だとよく直面します。4.d4!としてセンターにアタックするのが好手らしいです。この手だけは知っていたのですが、その後の指し回しがお粗末でした。

 

ちなみに4.d4!のアイディアを知ったのはものぽさんの動画からです。リンクを貼っておきます。

 

 

6.dxe5 dxe5 7.Qxd8 Nxd8 8.Nxe5とすれば白はポーンアップ、展開の速さも主張できます(7…Kxd8には8.Bxf7、こちらはポーンアップとキングの安全性で優勢でしょうか)。「展開で勝っているのだからクイーン交換するとアドバンテージが消える」と考えて手を選びましたが、素直にマテリアルアドバンテージをもらっておくべきでした。

 

こうして振り返っているとオープニングの理解度も深まるものですね。この変化は当分忘れないでしょう。

 

ミドルゲームで黒がクイーンサイドにキャスリングしてきたのでお互い殴り合いの局面になります。白はbファイルが開いたのでそこからメジャーピースで攻めるぞ、と思っていたらルークが落ちました。エンドまで粘りましたがリザイン。負け

 

ちなみにエンドでイリーガルムーブが飛び出しました。時間切迫と劣勢で焦っているところにアービターを呼ばれると呆然としてしまいますね。

 

4Rはどういうわけか棋譜が残っているので別記事にしてみます。3Rでひどい負け方をしましたがそれを引きずらずに戦えるのでしょうか……?②に続きます。それでは。

 

自己紹介

はじめまして。papershopと申します。

先日チェスのトーナメントに参加したので、その記録を残そうと思ってこのブログを立ち上げました。チェスの棋力はLishessのRapidでレート1540ぐらいです。初級者ですかね。

 

今後は大会参加記や自戦の振り返りなどを書いていこうと思っています。

 

自己紹介(チェスを始めるまで)

 1996年生まれ。

 小学校低学年のときに囲碁と将棋に出会う。

 少し遅れてチェスにも邂逅します。母が突然リサイクルショップで買ってきたチェスセットで弟と対局していました。スカラーズメイトだけは覚えましたが、定跡もピンもフォークもメイトの形も分からず適当に指していました。キャスリングは知っていた。

 

 小学校3年生から少年野球を始めたことでボードゲームとは疎遠になってしまいます。野球は中学卒業までの7年間続けました。ちなみにポジションはセカンド。チェス勢で草野球チームを作るようなことがあれば呼んでください。捕手と外野以外は一通り経験済みです(守れるとは言ってない)。

 あと中2ぐらいからアコースティックギターエレキベースを始めました。家にあったので。

 

 高校には囲碁・将棋部があったのですがそこには入らず。運動を続けたいとは思っていたのですが野球はもういいやと思っていたのでワンダーフォーゲル部(登山部)に入りました。

 なぜまたワンダーフォーゲル部に?という話ですが2つほど理由がありまして。

 一つ目。くるりというバンドの『ワンダーフォーゲル』という楽曲があり、中学生の頃からよく聞いていました。これと同名の部活に入るというのもなかなか面白いじゃない?という話で。くるりの曲のMV貼っときますね。

 

 二つ目。これが大きかった。というのも「いま入れば絶対レギュラーだよ!」という甘い言葉に誘われてしまいまして。いや言いたいことはわかります。登山でレギュラーってなに?というかレギュラーってことは大会があんの?と。私も同じことを思いましたよ。

 

 そんなわけで部活が忙しくてチェスをするという選択肢が脳裏に浮かぶこともなく。登山のほうは1年生の夏でインターハイ出場、全国20位くらいでした。登山のインターハイってなんだよという話ですが。

 高2の冬にエレキギターを買い、学祭用のコピーバンドを組んだりも。ちなみに当時練習で使っていたスタジオは上京前のサカナクションも使っていたとか。

 

 そんなこんなで部活が終わるころにはもう受験シーズンに入り、受験が終われば大学の新歓。バンドサークルに入ると決めていたので、まさか他大のチェスサークルの新歓に行くなんてことは考えもしませんでした。学内のバンドサークルに入り、夏頃には他大の短歌サークルに入りました。

 いや分かりますよ、短歌ってなんだよって話ですよね。これ以上脱線すると大変なことになりそうなのですが一応言及しておくと、元から短詩形文学が好きだったこと、それと「何か形に残るようなものを作りたい」という思い付きで他大の短歌サークルに飛び込んだわけで。もともと俳句や短歌のような年に一度同人誌を出したり専門誌の新人賞に出したりしていました。けっこうちゃんと歌作をしていたんですがいつの間にかフェードアウト。短歌を詠むのは辞めましたが読むのは今も好きです。

 

 そんな中たまたまチェスを再開するチャンスが訪れました。2018年公開の映画『ペンギンハイウェイ』を見に行ったところ、作中に主人公がチェスをするシーンが流れます。久しぶりにやってみようかな、とChess.comのアプリを入れて大学の講義中によく対局していました。いちおう棋譜解析やレッスンもこなして有料プランにも入っていたんですが、これもいつの間にかフェードアウト。

 

 その後なんやかんやあって6年かけて大学卒業。専攻は男性学でした。

 

チェスをちゃんと始める、そして1年間続ける

 大学卒業直前の2月ごろ、友人といたときに「何かの日本代表になりたい」という話になります。狙い目はやっぱりマイナースポーツでしょう。カバディやペタンク、クリケットフィーエルヤッペン……と来たところでチェスボクシングが挙がりました。

 「そういえば僕ちょっとチェスやってたわ」「とりあえずチェス再開します」ということでチェスを再開。コロナ禍だったこともあり時間は十分すぎるくらいありましたからね。

 

 んで、まあ「チェス 初心者」なんかで検索するわけですよ。そこで出会ったのがルセナ氏のYouTubeチャンネル。

 

www.youtube.com

 

これを見ていると「この人楽しそうだな」「強い人ってこんなにチェスを面白がれるんだな」と思い、そして「自分も強くなりたい」と思うように。

これがきっかけでタクティクスを解いたりオープニングを覚えたり簡単なチェックメイトの手法を覚えたりするようになります。いいぞその調子だがんばれ。

 

その他にもNCSのミドルゲーム講座、メインライン探訪、棋譜添削講座などいろいろ見ていたのは大きかったです。どの講座もとても面白くて、勉強が苦にならないような内容でした。こういう講座を見て苦にならないという時点でそこそこ適性があったのかもしれませんが。

 

あとはチェス観戦でしょうか。NCSの大会配信に毎回張り付いていました。これも見ていると面白いんですよね。観戦しているとチェスのモチベーションが上がるのが不思議です。

 

そんなわけで見事NCSの術中にはまり、今年の1月頃にNCS会員になってしまいました。ステップアップチェス大会に出るためですね。

 

とりあえず自己紹介はこんなところで。それではまた。